アンパンマンと著作権
子どもから愛されるキャラクター、アンパンマン。特にアニメを見せたわけでもないのに、我が子も取り憑かれたようにアンパンマンの虜になっている。その理由の一つに「遭遇率が高い」というのが挙げられると思う。保育園の看板にも、遊具にも、病院の待合室にも彼はいる。スーパーを歩けば、アンパンマンのパン、ウインナー、チーズ、ラムネ、ジュース……、至る所に彼はいる。今まで気にしていなかったが、探してみると結構いる。
心理学の「ザイオンス効果」だと思う。同じものに接する回数が増えるほど好印象を持つようになる。それは、小さな子どもでも同じで、いつどこに行っても大体そばにいる「彼」に魅力を感じてしまうのではないだろうか。
そこで、大人なら一度は思うあの疑問。
「アンパンマンに著作権ってあるの?」
調べてみたら、普通にあった。サイトにもしっかりと「許諾を得ずに、使用、複製、転載、改変その他の一切の利用をすることはできません。」と書いてある。
ではなぜ、彼はさまざまな園庭に爽やかに立っていたりするのだろうか?
気になって調べてみたら、「アンパンマン幼稚園」の存在に辿り着いた。
全国で唯一、作者やなせたかし先生の公認で、アンパンマンを園のキャラクターとして使用している幼稚園が静岡県にあるそうだ(逆を言えば、ここ以外の園は公認されていないということになるが)。
園長が先生とご縁があって話をする機会があったときに、「こどもたちのためならいいよ」と快く承諾してくれた〜とサイトには書かれていた。先生、かっこいい……
だから、他の園は承認を得ずに「彼」を派遣している可能性がある。しかし、先生は厳しく取り締まることはなかった。その一番の思いが「こどもたちのためなら」だったのだと思う。
文化庁の「はじめて学ぶ著作権」という教材コンテンツにも、先生のキャラクターが登場している。そこに掲載されている「作者からのメッセージ」が、著作権の原点だと思ったので、ぜひ多くの人に読んでほしい。
<要約>
「作者の気もちに反して改変・加工などをされない権利」が私には認められているが、子どもたちが作品や作者の気もちを大切にすることを学習するために必要で、効果的であるのであれば、この教材コンテンツの絵柄の改変について、指導に当たられる先生にお任せすることにします。
私はこのメッセージを読んで「作品に愛を持って接してくれると信じて、あなたに任せます」 と伝えているように感じた。
著作権はいろいろと難しいけれど、「他人の作品を大切にする」という単純なことだと思う。
残念ながら複製したり、商品化したり、自分の作品だと嘘をついたりする人がいるから、作者に不利益にならないために法律はあるけれど、作者も決して自分の作品を頑丈な金庫に入れて、誰も目のつかない場所に置いておきたいわけではない。みんなの目に触れ、愛されることを願っていると思う。
だから先生は、作者である「私」、そして私が生み出した「アンパンマン」が悲しい思いをせずに、子どもたちの笑顔の理由になってくれるなら…、といろんなことを容認してきたのではないかと思った。作品を受け取る側はマナーとモラルを持って、作者の思いを守らないといけない。
アンパンマンが子どもたちに愛されるのは、作者の愛が詰まっているからかもしれないなぁ、なんてことを考えた夏の終わり。