マグロプレイ
この記事は前回の続きです。
マグロ釣りごっこって何だ?!
休日の夕方、私の心はざわめいた。私は答えを強く欲していた。
ようやく帰宅した狂平に聞く。
「マグロ釣りごっこって、何?」と。
すると、狂平はニコッと笑って答えた。
「今からマグロ釣りごっこやろう!」
「じゃあ、お父さんとお母さんは、こっちに並んで。」
言われるがままにリビングの隅に並ぶ私と妻。
狂平はソファに飛び乗ると威勢良く「うぉりゃー」と声を張り上げると同時に、
左右の拳を重ね合わせ、それを頭上へ振り上げる。
エア漁師。マグロの一本釣り in リビングの幕開けである。
「お母さん、僕が手を振り上げたらジャンプしてこちらに来て!
そして、ピチピチして!」
妻にマグロに扮しろと言っているのである。
ためらう妻に、「早く!」と容赦ない狂平の一言。
漁師になりきって腕を振り上げる狂平。
恥ずかしそうにうつむくだけの妻。
ある意味、マグロである。
そして、言うまでもなく、妻の目は死んだ魚の目をしていた。
そして、私の番。
再び、腕を振り上げる狂平。
下を向き、「ピチピチ」と小声を発する私。
私もまた、ある意味、マグロであった。
ちなみに、マグロ釣りごっことは狂平が即興で考えついたもので、
この遊びが行われたのは、後にも先にも、この夜だけだっだ。
あの一夜、私と妻は、確かにマグロであった。