子は育つ。
少し前になるが、長男ユウスケ(小3)の運動会に行ってきた。
ユウスケはリレーメンバーに選ばれ、しかもアンカーを務めるとのこと。
リレーは全学年による混成チームで、まさに運動会のメインイベント。
出場者の保護者は特別にゴール近くのベストポジションに案内されるのだ。
優越感。ははは。
そのひとつ前のプログラムは、3年生の「かけっこ」。
一学年で4人だけが出場できるリレーのメンバーなのだ。
一等賞に決まっとるわいと余裕で眺めていると、
「位置について」の声がかかっても横を向いて遠くの誰かとおしゃべり!
何たる注意力散漫(父親譲り)!
さらに、「ドン!」の合図で慌てて走りだすも、
コーナーで派手に大転倒というコント仕立ての結末!
とぼとぼとゴールへ向かうユウスケ。
膝から流血しているのが、遠目から見てもわかる。
しかし、次はすぐにリレー。
出場者は所定の位置につくようアナウンスが流れている。
どうする?けして、強い心を持っているわけではない我が息子よ。
どんな歓声が聞こえている?アナウンスは届いているか?
私は息を飲みながらユウスケの行動を見守った。
そして、父親となった自分史上最大の声で「がんばれ!」と叫んだ。
ユウスケは片足を引きずりながら所定の位置に向かっていた。
リレーは随分と離された状態でたすきを受け取り、そのまま見せ場もないままゴール。
前日、華々しい活躍を夢想した私たち家族の思い上がりは見事に萎んだ。
リレー選手たちが各々、自分の席に戻っていく。
クラスのヒーローを出迎える児童たちも笑顔でいっぱいだ。
しかし、ユウスケはクラスの輪に加わらず、私たち家族の観覧席へやってきた。
クラスメイトに合わせる顔が無いのだろう。
血はまだ止まっていなかった。
私は「胸を張って席に戻れ」と一言だけ声を掛けた。
ユウスケは足取り重く、3年1組の輪の中に入っていった。
妻は少し離れて、ユウスケの後を追いかけた。
しばらくして、妻が涙を流しながら戻ってきた。
3年1組の仲間たちは、息子がなかなか戻ってこないことを心配していたという。
「ユウスケ、血が出ていたけど大丈夫かな?」
「早くユウスケにお茶をあげたいんだけど」
そして、ユウスケの姿を見つけるやいなや、クラスのみんなが集まってきて、
「ユウスケ、がんばったな!」と励ましの声をかけてくれたり、
「ユウスケと医務室に行ってくる!」と肩をかしてくれたり、
みんなが温かく迎えてくれたそうだ。
我が家には、子育てに関する教訓や思想など立派なものはないが、
いつも妻と話し合い、大切にしている2つの方針がある。
●友だちを大切に
●自立を促そう
「やったねユウスケ、今日は金メダルだ!」
夜、ユウスケと一緒に風呂に入り、そう声をかけたら、
「はぁ?何それ?」と言われた。
今度、金八のビデオ、無理矢理見せたろ。